※これより以前の
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何ともはや、贅沢なコンサートでした。町田のアートスペース・オー、2Fのギャラリーには100席くらいの椅子が用意されていたでしょうか、オーナーの話では50人くらいで済まそうか、なんて言うくらいの場所で、あの第一線の戸田弥生さんのバッハを聴いてきました。土日の2日間、最前列の至近距離 (2.5~3m)で堪能してきました。
曲目はソナタとパルティータの計6曲、二日目の本日はパルティータ3番がスタートの予定でしたが、この演奏会に誘ってくれた友人に私が、これでは聞き手がついて行けないのではないかと話していたら、その直後にソナタの3番を第一プログラムにするとの変更がアナウンスされました。
第一日目の演奏終了後、求めたCDにサインをしてもらった時の事ですが、戸田さんは終始にこやかに、「やぁー、パルティータの一番はあまり弾いた事がないのよね」と冗談っぽく話されていました。確かにこの曲と2日目のソナタ第三番は譜面を見ながらの演奏で、他の4曲と比べて仕上がりの点で多少は開きが見られました。でも彼女の譜面に向かって投げかける視線のすぐ奥には、私の目玉があったのです。とても緊張しました。
しかし、せまいギャラリーで、これだけの実力演奏家がストラディバリで演奏してくれる贅沢は、二度と味わえない貴重な経験ではないか、こんな贅沢な演奏を今まで聴いたことのある人がいるとすると、そんな~ズルイズルイと感じさせるほど、私にとっては素晴らしいものでした。
戸田さんの演奏を聴くのはこれで4回目になります。このHPの「無線のページ」で記事の全文検索を提供していますが、そこで「戸田弥生」と入れると6~7件の記事が出てきます。私が彼女の演奏に抱いているイメージは、透明な音色しかも強い響き、そして技術的な裏づけと比類のない感性、まさにこれにぴったりの演奏だったと思います。
緩徐楽章では、彼女の呼吸の音が激しく聞こえてきます。曲のピークではほとんど息をしていないのではないかと思えるくらい、あるいはここで呼吸を整えているからなのでしょうか、もしかして心臓の鼓動も聞こえていたのかもしれません。演奏後は衣装の一部やVnの顎当てが接している体の部分が、真っ赤に腫れていました。
戸田さんのバッハは格別です。バッハの偉大さを改めて感じさせてくれます。それだけではなくて、彼女が取り組もうとする意気込み、聞き手が改めてバッハをちゃんと聴かなくてはと思わせるような何かがあります。来年の3月には全曲のCDが完成する予定とか、ぜひ「戸田にバッハあり」と言われるような作品を完成させていただきたいと思います。