秦野文化会館に家内と出かけました。たまたま無料券が手に入ったのもあったのですが、NHKのドキュメンタリー番組で、ブロン先生の下で練習に励む彼が、小澤征爾の指揮でシベリウスを演奏するまでを描いたものを見たことがあったりして、少なからず興味を覚えたバイオリニストでした。
曲目は、ブラームスのソナタ第1番ト長調、モーツァルトの第34番変ロ長調、フランクのイ長調ソナタ、アンコールは愛の挨拶、ハンガリー舞曲第5番、カンタービレの3曲でした。
大ホールに80%くらいの入りだったでしょうか、久々のホールトーンを聞くことになるのだなと思いながら待っていました。ブラームスは川村さんの演奏で聴いた第2番と、あと第3番は馴染みがあるのですが、第1番はほとんど初めてのような気がします。
演奏が始まりました。うーん、美しい・・・、美しすぎるくらいの音色が流れてきました。前回と前々回は演奏者の目の前で聴きましたので、今回は少し勝手が違いましたが、安定したスケールの大きな演奏だったと思います。選曲がおとなし過ぎると言うか、まだまだ彼の本領をつかめない物足りなさも感じました。しかし、これからどのような方向を目指していくのか、どんなジャンルの曲を聞かせてくれるのか、大変楽しみなバイオリニストだと思います。
共演したピアニストはリトアニア出身のイタマール・ゴランさん、ピアノの天板を大きく開け放していたので、どうなるかと心配していたのですが、うまくバランスした音量で支えていました。フランクのソナタでは、テンポが一定しないような印象も受けましたが、これはアンコールになってから解消されました。実に樫本さんとテンポの振らせ方が合っているのです。ピッタリでした。
アンコール曲をどれにしようか、息の合った二人のパフォーマンスに会場から笑い声が聞こえてきます。実に楽しそうなお二人でした。4曲目のアンコールを演奏するのかと思わせながら、ピアノの鍵盤のカバーを閉じただけで退場と言うウィットも良かったです。
樫本さんはまだ21歳、テレビで見るよりは少し横幅が広くなったような体格でしたが、ますますスケールの大きな独奏家に間違いなく成長すると思います。コンツェルトよりも独奏会でじっくりまた聴いてみたい、素晴らしい演奏家だと思います。