上野に行ってきました。素晴らしい公演でした。最安席を一週間前に入手できて、それも 5F L列の一番端っこでした。でも、前に席がなくて、小物を置けるような肘掛スペースがあるので、ゆったりと鑑賞できました。
ゲルギエフは椅子に座ったり立ったりが半々くらいで、飛び上がることはありませんでした。舞台はシンプルですが、とてもきれいでした。音は最高ですね(NHKホールとの比較なので当たり前かも)。スカラ座とは違う音色でした。弦はきれいな音だけではない、リズムがある、躍動感がある、渋さがある、とにかく味がありました。
ここのところ、ゲルギエフのCDやテレビ放映ばかりを熱中して観たり聴いたりしていたものですから、こうやって生の演奏、それもキーロフ・オペラの公演を目の当たりにできるのは、本当に幸せな事だと思いました。
配役は、タチヤーナ役が期待していたマターエワではなく、パヴロフスカヤでした。何やら、「戦争と平和」に出る予定のネトレプコが来日中止とのこと、その影響もあったのかなと思いました。オネーギンとレンスキーは若手組がやりました。それぞれ、ウラディミール・モロースとダニール・シトダです。しかし、この二人がまた凄い。バリトンとテノールのいずれもが超一流の声をしていました。
キーロフオペラは次回からマリインスキー・オペラと改称するそうです。劇場の名前はすでにマリインスキーに戻っていたのですが、ゲルギエフの意思もあり、今回統一するとの事でした。それともう一つのビッグニュース、2006.1月にゲルギエフがこの劇場を引き連れて、ワーグナー「リング」の全曲を演奏します。これは凄いイベントになりそうです。建都300年を迎えた今年のサンクト・ペテルブルグ公演の演目でもありました。
余談になりますが、休憩時間にロビーを歩いていたら、何とピアニストの加藤洋之さんとバッタリ逢いました。町田の佳廉リサイタル以来です。すこしお話をしました。「マーラーのファンでしたよね」、「いやぁー、僕はこのオネーギンが大好きで、大好きで・・・」と、こんな会話をしてきました。確かにこの作品は、改めて何度か聴いてみましたが、美しいメロディーとワクワクするようなストーリー、そしてオネーギンの人間性に対する憤り(どうも私はドン・ジョバンニのイメージが頭から抜けきらなかった)など、もちろんゲルギエフと同じ空気を吸えた事も含めて、大変印象に残る公演となりました。