サントリーホールに友人たちと4人で行きました。これは私をブルックナーのファンにさせた、極めつけの曲なのですが、それも今では最高のブルックナー指揮者と言われるスクロヴァチェフスキー(ミスターS)ですから、本当に楽しみにしていました。一昨年でしたか、オペラシティでのザール・ブリュッケン公演が評判を呼んだ話も聞き及び、いまやN響を超えんばかりの活動を展開している読響の共演も楽しみでした。
座席は2F左側のA4列、以前ゲルギエフとPMFオケを聴いたところと近く、指揮ぶりがつぶさに見られる最高の席でした。第1曲目がベートーベンの交響曲第1番、これが実に生き生きとした良い演奏でした。団員たちも、演奏が終わったときにビックリしたような顔をしているように見えるくらい、最高の出来栄えだったようです。
休憩時間のときですが、ピアニストの加藤洋之さんにバッタリ会いました。コンサート会場で会うのはキーロフのオネーギン以来でしょうか、やはりベートーベンは良かったとおっしゃっていました。前述のオペラシティ公演を目の当たりにされたとも仰っていました。実は前日のFM放送でバイオリンの磯さんとの共演を聞いていたので、その話をしたところ、ご本人はあまり意識されていないようでした。
さて、本命ブルックナーが始まります。ミスターSの指揮ぶりは、必要なところだけに指示を出すように見えました。それなのに全体の響きがすごいのです。特に感動したのは、第2楽章シンバル(ノヴァーク版)のあとでした。ホルンとワーグナーチューバの奏でる旋律の中で、私はブルックナーが思い馳せるワーグナーへの追悼と同化したような気持ちになりました。
この感動は第3楽章にも続きました。軽快なメロディーで終始するはずの楽章なのに、今回は違いました。様々な思いが頭の中を過ぎります。これが真の名演奏なのかなと思いました。しかし、曲が終わるや否や、余韻も残っているうちに最前列の若いのが汚い声でブラボーを挙げました。私は頭の中が真っ白になりました。
何度かミスターSが舞台に登場し、観客の熱い拍手に応える姿を見ていたら、やっとそれまでの感動を取り戻すことができました。団員を信頼し、慕われている姿がそこにありました。ここしばらくは今回の演奏の余韻を楽しめるような気がしています。