私はブルックナーのことを、全く興味の対象外にしていたくらいでした。しかしこの7番を聴いて、なかなか味わい深いものがあるなと思い始めました。
ブルックナーの人柄は、この記事の最後に付けたメッセージに良く現れていますが、曲の完成後でも、演奏の練習中あるいは出版の前後などでも、作曲者本人あるいは弟子、その他いろいろな人が楽譜に手を加えたみたいです。
ハース版は「怪しげなものは採用しない」方針で、最も原典版に近いそうですね。朝比奈さんのフローリアン教会における録音のエピソードにもありましたが、 6秒もの長い残響時間のあるホールでは、ノバーク版に採用されている打楽器などは無い方が、曲の本質をより良く表せると言う話もあります。CDではヨッフム盤、朝比奈(フローリアン教会)盤、マズア、レバイン、映像としては小澤+サイトウ記念、ティーレマン+ウィーンフィル、生演奏ではスクロヴァチェフスキー+読響、大友直人+京都市響などを聞きました。
ヨッフム盤は、流れるような旋律とハーモニーの美しさが際立っていました。マズア、レバイン以上の洗練された感覚を持ちました。朝比奈盤は、メロディーの歌わせ方、ダイナミックさ、神聖さなどを全て持ち合わせた別格のものと感じます。録音はアナログみたいだし、大阪フィルは時々ボロも出しますが、それをはるかに超えた構成力、臨場感、宇宙観などが含まれているように思いました。特に第4楽章の美しさを再発見しました。ブラームスにも通じる構成を感じました。奇跡的な鐘の音も聞こえました。ホールの残響が曲に最高の響きを与えてくれます。その空間にノバークも同席していたなんて、凄い事ですね。(添付した画像は同じフローリアン教会で、カラヤン+ウィーンフィルが8番を演奏したときのものです。)
朝比奈さんが何故ハース版を採用したかどうか詳しくは判りませんが、曲の途中のフレーズ間の間合いを大きくとった指揮ぶりに、大阪フィルの団員は日頃それほどの意識は持ってなかったそうですが、このフローリアン教会にきて演奏して、初めてその意味が分かったなどという、面白いエピソードも紹介されていました。演奏するホール、聴衆、時代などに合わせた版の選び方なども、ありそうな気がしてきますね。
以下、引用です。
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ブルックナーはとても遠慮深い指揮者でした。ウィーン・フィルの指揮台に立ち、彼の交響曲《ロマンティック》を指揮することになりました。彼がなかなか指揮棒を振り上げないので、コンサート・マスターが彼に向って、「さあ、どうぞおはじめになって下さい」するとブルックナーは、「あなたがたこそどうぞお先に!どうぞお先に!」