「エイジング」と言う表現を乱発される方がいます。その中身については諸説様々なものがあると思いますが、私の持論から言うと、「エイジングに惑わされるな、人間の耳は信用できない」です。
エイジングで音が変化したと思った内の半分以上は、自分の聴く耳が変化したのではないかと思います。明確に効果のある手段(例えばコンデンサの種類と音色など)は、テストの時点で音の違いを見分けられますし、あとで結論が逆転した経験は持っていません。
エイジングとウォームアップの時間的な差ですが、前者は数ヶ月以上に渡って変化し続けるもの、後者は数時間で変化を完了するものと、長岡鉄男さんは定義しているように見受けられます。
例えばスピーカーボックスを製作した場合を例にとると、板の隙間にしみ込んだ接着剤が完全に乾くには数日間かかると思います。木材の繊維が枯れてきて、素晴らしいバイオリンの音が出るには100~300年もかかります。スピーカーのエッジが経年変化でボロボロになるのは、モノにも寄りますが10~20年くらいでしょうか。
以上に挙げたエージングなら、例え自分の耳の性能が変化しても、それらの差を充分に察知できるような話になると思います。しかし、数時間で音が変化する現象については、技術的側面で我々としては捉えたいと思います。それができないのであれば、耳が変化したと言われても反論できません。
【自分の耳は、信用できるか?】⇒耳が変化する原因ですが、
・年齢が進んだ(長期的な変化、これは仕方がありませんね)
・大音量で音楽を聴く方(耳はとっても疲れやすいのです)
・思い込みの多い方(こうなるベキだ、が優先して判断力が鈍る場合)
人の意見に耳を貸す習慣こそ、オーディオの改善を目指すものとして最も大事な事のように思います。これは仕事や家庭の生活でも同じかな? 技術的に説明できない場合の「逃げ」としてエイジングという表現を使ってほしくはない、と言うのが私の持論の中身です。