9/17の最終公演を目指してNHKホールに行きました。会場は満席状態で、私と家内の二人はエコノミー席、それも3Fのだいぶ後ろの方で観劇しました。しかし真下が階段通路になっていて、オーケストラBOX全体が見える良い席でした。
10日ほど前に入手したDVDと異なるのは、オテロがドミンゴ ⇒ クリフトン・フォービス、デズデモナがバルバラ・フリットリ ⇒ アンドレア・ロスト、この二人だけでして、オペラグラスで見るたびに、アァッ、あの人だ! と分かり、懐かしいような気持ちで一杯になりました。
ムーティの指揮をしている様子も良く見えます。さあ、始まりました。いきなり凄い音響です。NHKホールでも、舞台から降りた位置のオケの音は素晴らしく、3Fでも天井が高いためでしょうか、大変美しい音が流れてきました。いや、これはオケが違うしムーティが指揮をしているからだ、曲が進むにつれて、そのようにも思いました。
スカラ座フィルの演奏は、弦の美しさと言い、打楽器のハギレの良さと言い、絶品です。それにも増して、出演者の歌声が素晴らしいものでした。主役のフォービスは、ウィーンでドイツオペラを歌う人だったそうですが、ムーティが単独オーディションの後、いきなり引っ張ってきた若い歌手のようで、まだオテロを歌い始めて一年くらいだそうです。私の印象も、歌い出しのところは、アレッ、ドイツオペラ風の声だなと、一瞬びっくりしたのですが、幕が進むにつれて凄い歌手だと思うようになりました。体格も良いし、声がとても良く伸びて、説得力がありました。
デスデモナ役のロストは、DVDのフリットリにも増しての美人で、むしろ歌唱力は今回のロストに軍配が上がると思いました。第4幕の出だしの「柳の歌」を含むシーンでは、ムーティ・ロスト・スカラ座フィルの三者の絶妙なハーモニーに、大変感動しました。ここでもムーティの実力を再認識させられました。
さて、最も期待していたヤーゴ役のレオ・ヌッチ、この人は何と当たり役なのだろうか、演技に余裕すら感じさせます。出演者全員を引っ張っているようにも見えます。DVDで聴いたより、遥かに太い声でした。良い声でした。今回の「オテロ」の主役は、そう、ヤーゴ=ヌッチなのです。
第1幕の後は30分の休憩、第2幕の後は何と40分間の休憩がありました。2時間ちょっとの公演なので、18:00に始まって、21時には東京駅に向かおうかなと思っていたのですが、終演は22時でした。母国のイタリアでは、このようなペースでゆっくりとオペラを楽しむのでしょうね。私と家内はちょっと帰りのことが心配になりました。
結局、最後のカーテンコールまで見ましたが、本国から持ってきたそのままのセットと衣装、ミラノ公演そのままの配役、演出も同じ、そしてムーティとスカラ座の本物の音楽・・・・、このような公演を楽しめた事、それも初めての字幕付きと言うおまけもついて、私達には忘れられないオペラとなりました。