久々に東京文化会館へ行ってきました。NHKホールができる前に、ここでN響定期をやっていたので、30年振りになるのでしょうか。コンサート形式と言うよりは、オペラと言って通じる素晴らしい舞台でした。技術も申し分なく、懐かしいホールも相俟って、ワーグナーを堪能してきました。
ソリストには、緑川まり さん、青戸知さんなどのお馴染みの方がいました。オーケストラが舞台にあがり、さらにその奥にソリストと合唱が配置される形で、すでに3回のシリーズを終え、この4 部作最終編を迎えたとの事。演奏が始まると、もうそこにワーグナーの世界が広がり始めました。ジークフリート役の成田勝美さん、まさに適役でした。声が私のイメージ通りの味を出していました。ハーゲン役の長谷川顕さんは、グンター青戸さん以上に低い音域を持つ方で、これはもうシビレました。緑川さんのブリュンヒルデ、最高です。このキャストに対して私の持っていたイメージが、完全に置き換わりそうな気もしました。
幕間で、指揮の飯森泰次郎さんの略歴などを読み、大変驚きました。ワーグナーに対する深い造詣、そしてバイロイトなどにおける活躍、さらに今回の演奏会にたどりつくまでに意図したこと、苦労した事、成功させるための意気込みなどを知るにつれ、そうだ、だからこのような音楽を表現できるんだ、と思いました。
今回は、またまたワーグナーの魅力に捕り付かれてしまいました。イタリア最高のオペラである「スカラ座」を見た直後だったこともあったのですが、私は誰に何と言われようと、ワーグナーにシビレてしまいます。それを実感しました。例え無名のオケであっても、コンサート形式であっても、ワーグナーの芸術は不変であると感じます。特にこの4部作最後の作品は、変化にも富み、スリリングで飽きさせないものがあります。
ラストシーンをどのように演出するのか、今回の演奏形式では大変なのではないかと思いましたが、照明技術と背景のスクリーンを駆使して、非常にうまくまとめ上げていました。このシーンには大変感動しました。ワーグナーのオペラは曲も大変美しいので、情感をそそるものがあります。作品を楽しんだ後には、よーっしと元気が出てきます。もっともっと、日本での公演が増える事を期待したいと思いました。